茨城県社会福祉協議会および県内市町村社会福祉協議会では、令和元年東日本台風災害など近年に茨城県内で発生した災害への被災者支援の経験を踏まえ、令和2年度に「災害初動期対応チーム」を結成し、チーム員の育成に努めています。
1.東日本台風で経験した災害ボランティアセンター運営の難しさ
大規模な災害が発生すると、被災者支援をするため各地から被災地に災害ボランティアが集まってきます。このとき、災害ボランティアを受け入れ、被災者のニーズ(困りごと)の紹介や、活動現場への送迎などを担うため被災地に設置されるのが、「災害ボランティアセンター」です。(災害ボランティアセンターの詳細についてはこちら。)
茨城県内で災害が発生した場合、災害ボランティアセンターの設置・運営は、主に被災地の社会福祉協議会が中心となって行っています。
しかし、災害の発生に伴って突発的に設置することになる災害ボランティアセンターを、実際には同センターの設置・運営経験のないことが多い職員が、場合によっては自分たちも被災している中で、迅速かつ円滑に運営していくのは、至難の業です。
令和元年の東日本台風災害では、県内5カ所で災害ボランティアセンターが設置され、支援団体や地域住民の皆さんの協力もあり、被災者支援・災害ボラティア支援におけるセンターの役目を果たすことができました。
とはいえ、実際に同センターの運営を担った地元の社会福祉協議会では、その立ち上げ時から、センターの設置場所や駐車場の確保、災害ボランティアが活動で使用するスコップなどの資機材や、活動現場まで送迎する車両の調達など、手探りの中でもさまざまな作業に追われました。
運営においても、被災者のニーズを随時把握しつつ、連日センターを訪れる災害ボランティアの受付とオリエンテーションを実施し、災害ボランティアと被災者ニーズをマッチングして現場に送迎するといった膨大な作業を、通常業務もこなしながら対応する中では、必要な資機材の調達が遅れたり、どうしても充分な対処が間に合わないこともあり、次の災害発生に向けて、いくつもの課題を残しました。
参考)災害ボランティアセンター運営の様子
2.「災害初動期対応チーム」の結成
令和元年東日本台風災害での知見をもとに、茨城県社会福祉協議会では、特に災害の初動期において、災害ボランティアセンターをいかに迅速に立ち上げるかが重要だと考えました。これは、センターの設置・運営の経験がない職員では難しく、そのための知識と経験を持った職員の確保・育成が必要になります。幸いにも、今回の災害において、県内5カ所の社会福祉協議会がセンターの設置を経験し、また、県内の他の社会福祉協議会からも、センターの運営に応援職員を派遣していました。
そこで、翌年(令和2年)、茨城県社会福祉協議会は、センターの設置・運営経験を持つ県内社会福祉協議会の職員から有志を募り、「災害初動期対応チーム」を結成しました。災害初動期対応チームは、県内で災害が発生した場合に、被災地の社会福祉協議会に派遣され、災害ボランティアセンターのスムーズな立ち上げに向けた助言・支援などを行います。
現在、災害初動期対応チームでは、チーム員が災害ボランティアセンターの設置・運営を含めた災害対応の専門知識を深められるよう、さまざまな災害対応の専門家を招いて定期的な研修を開催するほか、広域的な災害においてもチームを派遣していけるよう、新規チーム員の養成研修を開催するなど、今後起こりうる大規模災害に備え、チーム員の研さんを図っています。
災害初動期対応チームの各種研修の様子
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